三浦綾子作品で使われているオノマトペ“たわわ”

難波真実

印象に残ったオノマトペ語句の13語目です。

ちょうど、昨夜の雪が晴れて、藻岩山の樹々は、枝の何倍もの雪をたわわにつけている。

三浦綾子『裁きの家』[四十]

この語句は、今のところ(収録している18作品で)、『裁きの家』だけで使われています。

よく使われる「たわわ」は、樹木などの果実がなる様子をあらわすときに使いますね。
これを、雪がくっついている様子に使うところが、北海道民ならではでしょうか。
雪深い地方の作家さんなら使うのでしょうか?
私はその例を知らないのです。

今日(2025年1月25日)の美瑛は、まさしくこの場面と同じでよく晴れておりました。
気温が高く、道路面の雪も融けて少なくなり、3月か4月頃の風景と見間違うほどでした。
ま、このあと、どっさり降るのでしょうけれど。

皆さんは、藻岩山(もいわやま)に登られたことがありますか?
私は札幌在住時代に一度だけ登った記憶があります。
日中でしたので、夜景を観ることはできなかったのですが、
気持ち良い空気と眺めを楽しんだ思い出があります。
三浦綾子さんは、冬の藻岩山を訪れたことがあったのでしょうか、ちょっと調べてみたくなりました。
(札幌の入院中はなかなか外出できなかったでしょうから、おそらくは作家になってから取材で訪れたのかもしれませんね。札幌での取材の様子を撮った写真は見たことがあります。光世さんの日記も確かめてみたいと思います)

それにしても、「たわわ」を使い慣れているのならともかく、ここまで全く使わないでいて、最初に使うのが樹木と雪の描写っていうところが面白いですよね。

私なら、「びっしり」と、とかかなあ。
樹木に雪がボリュームたっぷりにくっついている様子ですものね。
その姿を、果実がなっているように表現するところに、良さがありますね。

実はこの場面、謙介が息子の弘二を乗せて車で走っているところなのです。
行き先は、スキー場。
スキー場では、謙介の兄の博史と、その妻の滝江、そして出入りしている青年の北野が待っています。
そこに向かう道中で見た景色というわけです。

スキー場に向かう、そのちょっとした高揚感をうまく捉えているなと思いますし、「昨夜の雪が晴れて」という書き方で、これから行くスキー場のゲレンデの雪質の良さをもあらわしています。
おそらく雪はフカフカで真っ白。滑るにはお誂え向きですね。
読者に、これからスキーをしに行くぞ、という期待値を持たせているのでしょう。

それだけではなく、この一文の後には、こんな表現が続きます。

ある木々は、まゆ玉を刺したように愛らしく、ある木々は、何かの造形美術のように、女の足に見えたり、腕に見えたり、あるいは小犬に見えたりした。

三浦綾子『裁きの家』[四十]

つまり、果実に見立てただけではなく、まゆ玉や女の足や小犬にも見立てたというわけでした。
北海道の冬景色をこういうカタチで表現できるのだなあと、つい引き込まれる文章でした。

車を運転する謙介と、助手席に乗っている弘二、同じ景色でも見えているものは違うのだろうなあと思います。なにせ、スキー場で待っているのは、あの滝江ですからね。何か起こるのは間違いないです。
そして、弘二のアホさ加減といいますか、「大丈夫か、この子は?」というやりとりにもご注目ください。

なぜかこの頃、夕飯を書くのが続いていますね。
今日は、お好み焼きにしました。子どもたちからのリクエストです。
とはいえ、キャベツがおそろしく高いですからねえ、一瞬ギョッとしましたが、
定期購入で買っていたキャベツがあったことを思い出し、胸をなでおろしました。
普段は豚バラをのせるのですが(やっぱり、それがシンプルに美味しい)、今日は豚もも肉のスライスが特売だったので、それを。実際に作ってみると意外と美味しい。
脂が適度に少なくて、私としては安心して食べられるので結果的に好都合でした。
では、また。

難波真実

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