*第4回『泥流地帯』作文コンクール 感想*

ゑむゑむ@バーズ

3月末に、2023年度『泥流地帯』作文コンクールの応募作品集をいただきました!!
応募者全員サービスとして冊子版をいただいたのですが、他の方々の作品はこちらで初めて読むことができるため、大変心待ちにしておりました*
(作品集は先日、Web上でも公開されました♪ 上富良野町公式HP「『泥流地帯』作文コンクール」

コンクールを運営してくださった上富良野町のみなさま、選考委員のみなさま、および関係者のみなさまに、この場を借りて、改めて感謝申し上げます。
ありがとうございました。


さて、作品集をひととおり読ませていただいた率直な感想ですが…

みなさんの『泥流地帯』愛がすばらしすぎる!!!!!

散々言われていることですが、この一言に尽きます…!
同じ本を対象とした作文コンクールの、しかも4回目なのに、なぜこうもバラエティに富んだ作品が揃うのでしょうか?
それは、『泥流地帯』が魅力的な作品だということは言わずもがな、みなさんの『泥流地帯』愛が底知れないことに他ならないからではないでしょうか。

本当は、すべての応募作品について細かく感想を述べていきたいところですが、一緒に当ブログを運営している綾活民たちが(公的な立場にある難波さんを除き)全員が作品を応募しているということで(!)、そちらを中心に感想を綴らせていただきます。
(一応、わたし自身の作品についても言い訳をして触れています)

①神楽岡マイさん「泥流地帯の好きなフレーズ6選」

マイさんセレクションの『泥流地帯』の名言を、ユーモアを交えたおなじみの神楽岡節で紹介している作品です!
どの層に向けて作文を書くか? という視点からみた場合、マイさんの作品は、『泥流地帯』を読んだことのある層にはもちろん、読んだことがない層にもバッチリ響くものなのではないかと思いました。

読んだあとに、知らない方にも「どんなお話なんだろう? 読んでみよう」と興味を持ってもらえるような作品となっています。
今ちょうど映画化に向けて動いているところであり、ぜひともご新規さんをズバズバ獲得していきたいところですよね!

「三浦綾子? 難しそ~…」とか「昔の作品かあ~」という方々にもぜひこの作文を読んで、知って、そしてハマっていただきたい、イントロダクション的な役割も果たす作品だと思いました*

②すいさん「青き礎」

石村家で飼われていた「青」という名前の農耕馬目線で作中の出来事をとらえた創作作品です。
選評にもあるとおり、まさか青目線でくるとは…さすが、すいさんならではの発想と着眼点です!

原作では青の心の声はセリフとして描写されていないため、すべて想像で描かれている…のですが、馬は人と心を通わせる動物だと言われていますし、「青はこんな気持ちでみんなを見守っていたに違いない」と思わせる説得力があります。青優しいね…
また、すいさんの作品の中で、死んだあとに魂となった青は、人々を見守るだけにとどまらず、作中のある出来事について大きく介入する展開があります。

農耕馬だから、家畜だから、役に立つからという理由だけで青を大事にしているのではなく、大事な家族の一員として青を慈しみ、頼り、過酷な開拓生活を共に生き抜いた、人間と馬の絆を感じることができる作品です。

あと個人的に驚いたのが、人々の会話がとても自然だったことです。
わたしの拙い三浦綾子センサーでは、読みながら「あれ、三浦綾子ってスピンオフ書いてたっけ??」と錯覚に陥るほどでした笑
また違った角度から原作を捉えることができますので、『泥流地帯』ファンはぜひ読んでほしい作品です!

③「教師・三浦綾子に学ぶ『教育の本質』とは」

姫川何某とかいう、空気読んでない人誰ぇ(´・ω・`)???笑

それまで気持ちよく『泥流地帯』についての作文を読んでたのに、唐突に自分語りが始まったんですけど?(←これは読んでて本当にびっくりした)
結論で引用されてるのが『泥流地帯』じゃなくて『道ありき』なんですけど?
大丈夫?? 送るコンクール間違えてない???

…冗談はさておき。

拙い文章ではありますが、現在の教育現場で働く者として感じた先生方や子どもたちの様子を述べ、作中での学校の描写と絡めつつ、教師としての三浦(堀田)綾子を掘り下げて考えてみました。
ただ、選評でいただいたような高尚なテーマをこの作文で論じられたとは、筆者は一切思っていません…身に余る選評をいただき、ただただ恐縮の世界です…。

三浦綾子は教師時代の自分について否定しており、反省あるいは後悔しているような表現がエッセイ等でも随所に見られますが、(軍国教育はさておき)子どもたちにとってとてもよい先生で、年若いながらも教育の本質をしっかり体現していたのではないか。
ということと、
現在の教育現場が直面している課題や現在の教師に求められているものの大きさ、それに基づく大変さなどをお伝えするとともに、教職に就いている方への尊敬の気持ちと、伴走者としてのエールをつづった作品となります(なんと! 数行でまとまってしまった…)

実は、作品を書いていたときから「完成したら、わたしにこの作文を書かせてくださった先生方にも読んでもらおう」と思っていて、予備知識ゼロの方でも読んでいただけるように、三浦綾子の人となりや生涯、作中の展開などについてガッツリ説明を入れました。
そのため、上級ミウラーの方々からすると「そんなこと知ってるよ!」と結構くどく感じたのではないかと思います。

冊子をいただいてすぐ、実際に先生方に読んでいただいたところ、誰一人「いや、的外れだから。事務の立場で何わかったようなこと言ってんの?」ということを言う方はおらず(めちゃめちゃ優しい~~~)、

「ゑむゑむさんがそういうふうに思って、応援してくれていることが知れてうれしかった」
「すごく良く書いてくれてるけど、実際はこんなに立派じゃないよ笑 でも、ありがとう!」

などなど、温かいコメントをいただきました。

そして、この作文を読んでいただいた時点(年度末)ではすでに決まっていたことなのですが、今年度から新たに、今の学校でも子どもたちとお掃除を担当することになりました。
他にもいろいろと、より近くで子どもたちと過ごせるような業務が増え、やはり慣れない指導に悪戦苦闘しつつも、充実した生活を送っています。

そんな生活の中で「やっぱり先生って大変だなあ~…」としみじみかみしめているところなのですが、改めて自分の作品を読み返してみると、どうも教師側の大変さだけがピックアップされている印象で、
「大変なら大変なりに、先生方は何をやりがいと感じて教育に心血を注いでいるのか?」
という、いわゆる「教師という職業の魅力」の部分が、すっぽりと抜け落ちてしまったように感じています(自己批評)

また、結論部分で触れた、三浦綾子が体現していた「教育の本質」という部分がえらくボンヤリしています。(自己批評その2)
「いや、結局どういうことなのよ?」というね…(モニョモニョ

これらについては、教育現場で働く中で考えたこと・感じたことを、三浦綾子が教師時代や学校生活について書いた他の小説・エッセイに即したかたちで(綾活なのでね!)、こちらのブログにまとめていけたらなあと思っています。(今後の展望)

以上、応募した作品について散々言い訳補足させていただいちゃいました。
普通はあまりしないことだと思いますが…ブログだから自由ですよね!


もちろん、他の作品もすばらしく、興味深いものばかりでした!

特筆すべきは、やはり最優秀賞の作品。
ニモさんの「のこされた人」です。

わたしの職場の上司が、かつて三浦綾子作品をたくさん読んでいたとのことで、ありがたいことに、わたしの綾活をリアルで応援してくださっています。
『泥流地帯』についても、読んだことがあり、内容をなんとなくおぼえているとのことでした。

先生方には冊子を回覧するかたちで読んでいただいたのですが、休憩時間に別件でその上司に話しかけに行ったところ、なんと! 作品集を読みながらぽろぽろ涙をこぼされていたのです。
びっくりしてわけを聞いたら、ニモさんの作品を読んでたいへん感動されたとのこと!

ニモさんの作品は、泥流で弟の五郎を亡くし、やり場のない苦悩や怒りを抱えた兄の四郎と、教師となった耕作との心の交流が描かれた創作作品です。
原作にはほとんど詳しい描写のなかった四郎という存在と、一方で、自分を慕ってはるばる自宅まで遊びに来ていた五郎を泥流で亡くし、原作でもずっと苦悩を抱えていた耕作の様子が拾い上げられ、「原作では描かれていない空白」を丁寧に描かれた作品です。

わたしももちろん感動しましたし、『泥流地帯』に思い入れがある人たちのみならず、昔読んでなんとなくおぼえているという方の琴線にも触れる作品だということに脱帽しました。


それから、学生さんの作品もとても瑞々しくてよいですね!
大人の部と比べて、作品に対する忌憚のない感想が散見されたのが印象的です。

「こんなに心のきれいな人はいない」
わかるわかる。わたしも中学生のときに『塩狩峠』を読んで、まったく同じことを思いました。
大人になった今でも「真面目に、きれいに生きる」ことはとっても難しいしできていないのですが、難しいことをやり通す尊さや重要さが、少しずつわかってくるのではないかな…と思います。
わたしもまだまだ人生勉強中。

「映像化は難しい」
うーん、そうでしょうね。現に、『氷点』など、作者が生きているときに映像化されている作品はたくさんありますが、『泥流地帯』に関しては、作者の生誕から100年経って実現しようとしていますからね。
ですが、出版からもずいぶん経った今ピックアップされて、困難さを抱えながらも多くの人たちが映像化に向けて奔走しているということは、それだけ多くの人々に触れてほしい、(月並みな表現ですが)「名作」に他ならないからということではないでしょうか?

ほか、創作作品も含めて、わたしは、「学生」という人生の中でも短く、そして感受性が豊かな時期に『泥流地帯』という作品、ひいては三浦綾子の作品に少しでも触れて、考えて、作品を送ってくれたということに感動して、うれしく思っています。

わたしのように「中高生のときにちょっと読んだだけで深く刺さりはしなかった」という関わり方だったとしても、すごくうれしいです。

(おそらく、応募者のほとんどは上富良野の学生さんだと思いますが)地元を舞台にした『泥流地帯』という作品があって、それを書いた三浦綾子というすばらしい作家がいたこと。
そのことが、学生さんの将来に何らかのかたちで光を差し込んでくれることを、三浦綾子に光をもらった人間として切に願っていますよ。


短文投稿(X)の部。
三浦夫妻も嗜んでいた短歌もそうですが、限られた文字数で幅広く表現する、とても粋で風流なジャンルですよね。(Xと短歌を一緒くたに語っていいのかはわかりませんが)

わたしは、このブログを読んでいただいている方にはおわかりのとおり、何事もダラダラと長く書かないと気が済まない性分なので、短文で何かを表現するのを非常に苦手としています。
なので、スパッと短く、でも文字数以上に幅広く何かを表現できる方々を、素直に尊敬します。

また、X(いわゆるSNS)は身近な存在で、気軽に投稿できるので、もっと盛り上がってほしいなあと思う部門です。
というか、この部門を設けている作文コンクールってあまりないですよね???
それが『泥流地帯』作文コンクールの自由さと間口の広さを象徴するなあ、と思っています。


以上、2023年度『泥流地帯』作文コンクールについて、選考委員でもないのに長々と感想をつづらせていただきました。
ブログだから自由ですよね!!(大事なことなので2回)

末筆ではございますが、『泥流地帯』映画化プロジェクトをはじめとした上富良野町の取り組みと、三浦綾子文学に関する諸活動のますますのご発展をお祈り申し上げます。

ゑむゑむ@バーズ

コメント

  1. mai.kaguraoka より:

    この作文コンクール、テーマが『泥流地帯』って決まっていてかなり絞り込まれていて、さらに第4回にもなるのに、オリジナリティあふれる作品だらけで本当に驚くばかりです。特にスピンオフ作品の質が高すぎ。ぜったいに他になんか書いたことあるでしょ?って思います(笑)。文才のある人がうらやましいですわ、ホント。

  2. em.em_birds より:

    マイさん、コメントありがとうございます*
    本当に!!笑
    マイさんもそうですが、よく毎年書くことを思いつきますね〜。
    わたしは、感想文とか考察の真似事はできますが、創作はまったく書ける気がしません。
    きっと使ってる筋肉が違うんだろうなあ…と思っています。

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