三浦綾子作品で使われているオノマトペ“ざぼざぼ”

難波真実

印象に残ったオノマトペ語句の3語目です。

あたたかい日には、雪どけ水が轍にたまり、子供たちはその中を、ざぼざぼと歩く。

三浦綾子『草のうた』[29]

この語句は、今のところ(収録している18作品で)、『草のうた』だけです。
そして、小学館の『日本語オノマトペ辞典』(2007)に掲載されていない見出し語です。

『草のうた』は、三浦綾子さんの自伝小説で、幼少期頃のことが描かれています。
彼女は1922(大正11)年生まれで、この場面は小学校卒業時期ですので、昭和10年頃の描写ということになるでしょうか。

令和の今でも、雪解け時期ともなると、このような水たまりはあちこちにできるので、北海道民はイメージしやすいですよね。
昭和初期の除排雪の状況は全く知らないのですが、現在の除雪は、ある程度の高さを残しておく方式(圧雪というスタイル)ですので、暖気(寒気の対義語として、北海道ではよく使われる言葉です)が入ると、圧雪が緩み、ぐちゃぐちゃになります。そこを車が通ると轍ができ、それが水たまりになるわけですね。
そうなると、歩くのはもう大変。本州出身の私など、途方に暮れることもざらです。
でも、「春になったんだなあ」としみじみ感じる場面でもあります。

これを、「ざぼざぼ」と言い表すところが良いですね。
ざぶざぶでも、じゃぶじゃぶでもなく、ざぼざぼ。
なんていいますか、水だけ、ということではなく、雪や氷の入り混じった、液状というかみぞれ状というか、でも、圧雪の深さ(現在でも、深いときは20cm以上になります)をもあらわすと、こういう表現になるのかなあと。

北海道の暮らしの中で響いてくる音・言葉という感じですね。
あー、早く春よ、来い。
では、また。

難波真実

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コメント

  1. em.em_birds より:

    難波さん、オノマトペシリーズ連日の更新ありがとうございます(・ω・)
    毎回楽しく拝読しています!

    雪解け水のざぼざぼ、とってもわかります!
    子どもたち(主に小学生以下)って、長靴をはくと無敵状態になるので、躊躇なく水たまりの中に突撃していくんですよね( ° ω ° )笑
    (まれにスニーカーで突撃する輩も…)
    そんな子どもたちの無敵感、気が大きくなった様子、無遠慮に踏み荒らしていくさまが「ざぼざぼ」の一語から感じ取れる次第です。
    オノマトペ、奥が深いですね!

    • 難波 真実 より:

      ゑむゑむさん、コメントありがとうございます!
      ざぼざぼ、共感してくださいましたか、よかったです。
      > 長靴をはくと無敵状態になるので、躊躇なく水たまりの中に突撃していくんですよね
      そうです、そうです!
      大人には真似できないやんちゃです。
      ざぼざぼ、ぴったりですよねえ。

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