三浦綾子作品で使われているオノマトペ“はっし”

難波真実

印象に残ったオノマトペ語句の6語目です。

清彦はざりがにをつかんで、はっしと石の上に叩きつけた。

三浦綾子『裁きの家』[七]

この語句は、今のところ(収録している18作品で)、『裁きの家』だけで使われています。

このごろの小説作品で、「はっし」は見なくなりましたね。
使われている小説がありましたらぜひ教えてください。

何かにぶつけるとか、しっかりと受け止めるとか、そういう意味合いが込められた語句です。

清彦というのは、博史と滝江の息子です。
鬱屈したものを持っているように描かれていますが、そうなったのにはきっかけがあり、その原因は母の滝江にあると書かれています。
三浦綾子作品に登場する女性の中でも、結構な曲者で、まあ、悪女ですね。
少なくとも、私としては毛嫌いするタイプの類です。
でも、こういうタイプが好きな人もいらっしゃるのでしょう。

で、清彦はざりがにを投げつけているのですが、場所はどこだと思いますか?
これはですね、自宅なのです。
どこからか、ざりがにを捕まえてきて、自宅に持ち帰り、そこで投げつけたというのではありません。捕まえた場所が、自宅の庭です。
「え? なんちゅう庭?」と思いませんか?
この家、実は、庭に川が流れております。びっくり。どんだけ?
滝江の念願だったらしいですよ。
札幌の街で、それだけの広さとロケーションを併せ持つ土地って、すんごいお高いんでしょうけど、博史も清彦も、あまり幸せそうではない。滝江は生き生きと暮らしているように見えますが、内実はさてどうなのか。
滝江の目の前でざりがにを投げつけた清彦。さすがに驚く滝江ですが、清彦の思いをどこまで汲み取ることができるのか。
ま、そのあたりはぜひ本文をお読みくださいませ。

皆さんが「はっし」と投げつけるとすれば、何でしょうか?
そして、どういう場面でしょうか?
では、また。

難波真実

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